こういったことで大きな危機意識が生まれる

 環境が悪くなれば、それだけ危機意識が生じやすい。

 今年の夏の異様な暑さが襲ったことで、環境に対する危機意識は高まり、「地球環境がやばい」との声が強くなる。
 中国の勢いが加速して、石油などの資源の争奪戦が激化すれば、これまでの私たちの石油への需要について、考えるように危機意識が強まる。

 過去には、こういった危機的状況になって、危機意識を持ち、対策へと・・・といったケースが幾度となくあった。
 そして、今回もまさしくその危機的状況に繋がる出来事があった。

 「レアアース(奇土類)」だ。
 世界の97%を生産する中国から、レアアースの輸出が止まるという衝撃が日本を大きく揺れ動かした。
 その影響は大きく、自動車、電機、素材産業などレアアースを使う業界は多い。

 信越化学工業は、廃棄されたエアコンの圧縮機からレアアースを取り出し、自社製品にリサイクルするシステム作りに乗り出す。三菱マテリアルもレアアースをリサイクルする技術開発を本格化し、14年頃の実用化を目指す。日立金属はレアアースの代替となる新型磁石の開発に取り組む。
 ユニクロを展開するファーストリテイリングは現在、生産拠点の85%を中国に置く。だが、柳井正会長兼社長は8日の記者会見で、「中国一辺倒だったが、広げる必要がある」と回答。全体の3分の1異常をバングラデシュやベトナムなどに分散させる考えを示した。
(毎日新聞 2010年10月10日(日) 『企業は「脱依存」加速』より

 09年10月時点で中国に進出している日系企業は約2万2000社、中国内の民間企業で働く日本人は約6万9000人に達するという。

 今回の中国の出来事で、レアアースに対する対策が加速される見込みで、他の分野にもその影響は出てくる。
 今回は中国の出来事で、レアアース問題が浮き彫りになり、危機意識が強くなったが、問題はこういう危機的状況になって、ようやくというパターンになることだ。

 問題は日々、大きくなっているが、対策をとるまでには、長い時間を要するのが、これまでの反省点だ。
 今回もその一つであっただろう。しかし、対策を危機的状況にならない、初期に行動するというのは、なかなか難しいものだ。
 しかし、そういった悪循環からはやく脱け出さないと、さらなる深みにはまってしまうから恐いもの。

 今回のレアアース問題は、他の分野でも他人事ではなく、私たち自身の身近なところにも転がっている