基本が大切でその基本について書かれていた、新書『牙を研げ 会社を生き抜くための教養』(佐藤 優)

 はじめは、ちょっとした生き抜くためのコツといった感じかと思っていたら、根本に触れるような内容で、基本を学ぶ大切さが書かれていました。

胃袋がちぎれるような毎日を送る企業人必読
旧日本陸軍マニュアルに学ぶ仕事術
世界のエリートの思考法を理解するための宗教入門
論理の崩れを見抜く力をいかに鍛えるか
地政学を知ることで、激動する国際情勢がわかる
資本主義という世の中のカラクリをつかむ
これだけは知っておきたい日本近現代史
エリートの数学力低下という危機
本をいかに選び、いかに読むか……
知力と人間力を高める驚きの講義!
ビジネスパーソンとしておさえておきたい知の基本

クライシスとは、そもそもギリシャ語のクリシスから来ています。クリシスとは、一つは峠という意味。峠は山道の峠でもあるけれども、病気の場合にも使う。今日が峠だという言い方です。峠をうまく越えることができたら、旅行の場合は目的地に着き、病気の場合は持ち直す。峠を越えることができなければ死んでしまいます。クリシスには分かれ道という意味もある。分かれている道はのどちらかを選ばないといけない。まちがった方向を選ぶと目的地に行き着けない。そういう意味において、我々日本のあり方というのはいま分かれ道のところに来ているし、道をまちがえると目的地には到達できない、状況によっては死んでしまうかもしれない。そういうクライシスのなかにあることは確実です――本文より
(本より)」

 興味深かった内容は、

・部下から意見を聞いても、すぐには反応しない。話を最後まで聞いて、情報の根拠は何なのか、といったことについては聞く。しかし、自分がその情報についてどう思っているか、評価はその場では絶対に言わない。
 →情報自体は何人かの専門家から取るけれども、決断は自分で行い、ひとたび決断をしたら、強い意志を持って遂行する。

・独断と服従は相反するものではない。上司の命令に従っている範囲での独断は、良い独断で、命令違反ではないということ。
 →上司に指示を仰いでいる時間はないし、連絡の方法もない。そうしたら、上司は何を考えているかを忖度して、その上司の考えに反さない範囲において、指示されたことではなくて現状に応じて与えられた任務を遂行する。状況によっては命令と違うことをやるけれども、大枠では上司だったらこの変化にどう対応するかを自分で判断してやればいい。これが独断専行であって、下剋上とは違う。

・独断専行というのは組織にとって命ともいうべきもの。中間管理職でも、もし上司になったらどういう行動を取るかという発想を常に持ってやれるかというのはとても重要。
 →独断専行ができないようなら、指示待ち人間とみなされる。上司の考えに反することをしたらいけない。そこで「うまくやる」ということが重要になってくる。

・指揮官は組織の中枢であり、核心であるから、職務を遂行する責任感が重要で、逃げないことが重要。
 →不作為、それから決断が遅れるのが最もいけないこと。

・独断専行をうまくやりぬく一つの方法は、組織の幹部の後ろ盾を持つこと。
 →独断専行には違いないが、彼らのやることだからいいだろう、という具合に納得させられるかどうかにかかっている。独断専行をやる人というのは、突出して異常な人ではなく、人たらし型。必ず上、外に有力者の味方を持っている。

・独断専行というのは結局のところ、何かをバイパスするということ。
 →方向性において企業成り国家が狙っていることと違う方向だったら、独断専行はできない。言い換えると、ショートカットの力。

・独断専行できる人間というのは、中堅だけれども、実は幹部クラスの見識があるといえる。
 →独断専行が問題になるのは、権限と能力に乖離がある場合。結論から言うと、勘違いしている人間というのは、組織につぶされる。

・宗教は例外なく人間がつくったということ。
 →神が人間をつくったとか、あるいは仏の縁によって人間がつくられているというのは、人間の思想的な操作。

・人や情報が国境を越えて活発に行き来する現代は、政治、経済、環境など、あらゆる場面で解決すべきグローバルな課題が山積みしている。こうした課題に取り組むには、論理的に考え、文化の異なる他者が納得できるように、自らの立場を筋道を立てて説明する力が極めて重要になる。
 →大国と小国、あるいは大企業と小企業などが共通の土台で理解を深めようとする時、最も客観的な「数字」を抜きにして語ることはできない。グローバリゼーションが進むと、文化的に異なる人々との間でのコミュニケーションが生じてきくる。そうなってくると、コミュニケーションの核というのは、実は英語力ではなく、論理力。論理には、言語的な論理と非言語的な論理がある。数学というのは、そのうちの非言語的な論理。

・結局、外交というのは力と力の均衡線で決まる。
 →その力と力の変動が起きるとどうなるか。これは物理の法則。境界線の引き直しが行われる。だからどちらかの国の力が強くなってきたという背景がないと、領土国境紛争は起きない。

・読書計画のマトリックス。個人のキャリアアップのために読書をするのはとても大切なこと。目標を定めなければならないとよく言うが、その際に有効なのは、マトリックスをつくること。
 →横軸としては、読書の目的すなわち、仕事で使うために必要な読書なのか、教養をつけるために必要な読書なのか、趣味の読書なのか。一方で、縦軸としては、天井があるか、つまり、ここまでやれば重文だといえる基準があるものか。逆に、天井がないものかどうか、そのようなマトリックスが必要。

・極めて弱い動機で天井がないものというのは、身にならない。
 →このように、自分が何をやって何の本を読むかということをマトリックスの中に押し込んでみる。
 教養であり、天井はないという場合、どのような組み立てにすればいいのか。教養としての読書においては、動機を継続させることがすごく重要になってくる。趣味は好きでやっているから動機が強くなる。教養として身につけないといけないという場合は、必ずしも好きであるとは限らない。そこで天井がないものだと、やはり強い動機を維持することが必要になってくる。そのためには、天井があるところに押し込んでいった方がいい。その天井をクリアしたところで、天井がない方向に移行させていくという、たぶんこういう考え方になる。

・自分で調べたいテーマについて本を買う時は、最初に基本書を3冊か5冊買う。
 →2冊や4冊だと見解が分かれた場合、自分で判断しないといけない。だいたいの場合、基本書のスタンスというのは満場一致になる。1冊ぐらいずれていたら、この世界は一部に少数説があるんだなと、分かる。もし3冊買ってきて全部ばらばらだったら、その領域には通説がないということ。そういう分野と思って勉強すればいい。

・書籍は基本的に紙の時代が続く。
 →教科書会社の利権はそう簡単に崩れないから。電子書籍元年というのは小学校、中学校の教科書がiPadなどのタブレット型端末になった時。初動の段階で紙に慣れると、もうその紙から離れられない。でも、教科書全体の利権構造がある中、近未来においてタブレット化が進むとは思えない。だから小学校の教科書がタブレット化して、小学生たちが自分のお金で電子書籍を買うようになった時が電子書籍元年。

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