アメリカのトランプ大統領誕生後はどうなるのか? そのヒントになる、新書『トランプは世界をどう変えるか? 「デモクラシー」の逆襲』(エマニュエル・トッド,佐藤 優)

 2017年1月20日、アメリカの大統領にドナルド・トランプ氏が就任。トランプ氏がアメリカ大統領になるとどうなるのか? そのヒントが盛り込まれていました。

日欧を代表する二人の知性が世界を動かす新たな原理を問う!

虐げられたプロレタリアの不安と怒りを背景に米国大統領に就任するドナルド・トランプ氏。
「米国第一主義」は世界にどんな影響をもたらすのか?
日米安保はどうなるか。戦争のリスクは増大するか。
トランプ以後の世界、日本を読み解く。緊急論考収録!
(本より)」

 エマニュエル・トッド氏がアメリカ大統領選で、トランプ氏の当選を予測していたことから、トランプ氏の当選の背景にあったアメリカ国内について分析されていました。

 そして、佐藤優氏のトランプについての分析もあり、トランプ大統領のアメリカについて、今後の関係性などヒントになる内容が盛り込まれていました。

 興味深かった内容としては、

・アメリカのリーダーが「国を再び中心に置くことは多分可能性だ」と主張し、その結果、他の国もそれを考慮せざるを得ない。

・クリントンが大統領になった場合、湾岸戦争、9・11以降の米国外交・軍事の枠組みから大きく外れることはない。つまり、ロシアとの関係は修復されず、シリア情勢が悪化し、戦火は拡大することになりそう。さらには、中東全体が不安定化する恐れもあり、ウクライナ問題にも介入し、親米・親EU派と親ロシア派の対立が激化し、それが火種となりヨーロッパでも戦争が起きる可能性が出てくる。

・アメリカにおいて、日本で考える以上に学歴と収入が正の相関関係を持っている。つまり、学歴が高ければ収入も高いという構造ができあがっている。
 学歴が低いために収入も低い人たちは、現状が変われば自分たちの未来が開けるかもしれないと、トランプに望みを託した。
 これを国際関係でいうと、ロシア、中国、北朝鮮、イランといった国々は、トランプの主張通り、アメリカが国際社会への関与を控えてくれた方が、自分たちの利益を最大化できる可能性が高くなる。

・日本の情報空間における、多くの日本人にとってのバイアスにはこんな傾向がある。国内における個別の政治課題で国民と政府が対立することが多々あるが、国際社会の大きな変動の可能性を前にすると、国民は自らをニアリー・イコール国家という関係に擬制してしまう。つまり、日本にとって悪いことが起きる、すると自分にも良くないことがおきるのではないかと、国家と個人が一体化したような思考を始めてしまう。

・自由を何よりも優先する人々にとって、優勝劣敗は当たり前、平等は無きに等しい。放置しておけば、極端な格差社会が生まれることになる。

・平等を過度に重視するとどうなるのか。税制や教育制度において、格差を是正するために普遍性を担保しようとすれば、国家の強い関与が必要になってくる。
 しかし、それが行き過ぎれば、網の目を張り巡らしたような規制が、国家によって敷かれることになる。また、その政策に過剰同化した個人が、平等を破壊しそうな人物に対する自発的な監視や告発を行う恐れがある。その結果、自発性や創意、また健全な自由競争が抑制されてしまい、非常に息苦しい社会が到来することになる。
 自由の行き過ぎも、平等の行き過ぎも、社会を窒息させることになる。

・個人と集団の関係に目を向ければ、個人の力よりも集団的な力の方が明らかに強い。さらに集団は別の集団との間で、より有利なポジションを得るために競争をしたり、生き残りをかけた闘争を始めたりするもの。
 しかも集団の利益と個人の利益は必ずしも一致しない。一人ひとりは善意の個人であっても、集団となった場合、それが必ずしも善意の集団だとは限らない。
 船員一人ひとりが一生懸命仕事をする善き人間であっても、乗っている船が海賊船だったら、それは悪いことをしているのだと。従って、ただ一生懸命やればいいとうのではなく、どういう船の中で一生懸命仕事をしているのか、船自体を見よ、と。

・重要なのは「ディール」、つまり「取引」こそが最も重要。
 その結果として、自分の利益が最大化する。トランプが「強いアメリカを取り戻してみせる」と言うのは、大統領としてアメリカの利益を最大化させることが、国際社会における取引の最強カードになり、それによって勢力均衡を図ることができると考えているからかもしれない。

・アメリカでは政権交代のたびに閣僚や官僚など、数千のポストが入れ替わります。新たに選出された大統領は重要ポストを中心に、適任だと考えた人物を直接任命し、政権スタッフの陣容を整えます。これを政治任用といい、トランプ政権の場合、約4千人を政治任用する必要がある。

・トランプには政治経験が全くなく、政治任用に向けての準備不足が指摘されている。重要ポストは民意の洗礼を受けた政治家や、半ば公人ともいえる実業家、学識経験者などが就任する場合が多いので、「身体検査」はある程度可能。しかし、新たな官僚群を形成する、実務を担う膨大な人材まではチェックできない。
 身体検査のために必要な情報を最も持っている機関はどこでしょうか? 公安警察でもあるFBI。その意味でトランプは、政権発足前からFBIの持つ情報にかなり頼ることになるだろう。
 政権が発足すれば、内紛だって起きるもの。トランプには、誰が何をしているのか、何を考えているのか、閣僚やスタッフに関する情報が必要になってくる。当然、FBIから情報を得ることになる。トランプ政権を支える一つの基盤がFBIになる可能性は高くなるだろう。
 このシナリオ通りに進めば、FBIの政治家が進むことになる。トランプは、選挙期間中、連邦政府の機能を縮小すると主張していたが、それは社会保障、福祉分野の話であって、力の省庁、特に国内の治安維持にあたる機関や情報機関の力は強まってくる可能性がある。

・具体的成果のないところで信頼関係は存在しない。今回の安倍・トランプ会談で具体的成果に関する報道は安倍首相側からもトランプ氏側からも何もない。トランプ政権下で日米の懸案になると想定されているTPP(環太平洋経済連携協定)にしても駐日米軍に対する日本側の経済負担増大問題にしても、安倍・トランプ会談で何が話し合われたか、情報が全く出てこないのは奇妙。外交専門家からすると、「日本首相のトランプ詣で」という異例の出来事は、情報分析を誤った日本政府の焦りと映る。

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