主人公の過去の人生を探ると同時に、読んでいる側の人生にも響いてくるものがあった、小説『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(村上 春樹)

 タイトルにある通り、まさに巡礼の物語で、人生の転換点となったきっかけの謎を探る物語に引き込まれて面白かった!

小説『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(村上 春樹)

「多崎つくるは鉄道の駅をつくっている。名古屋での高校時代、四人の男女の親友と完璧な調和を成す関係を結んでいたが、大学時代のある日突然、四人から絶縁を申し渡された。理由も告げられずに。死の淵を一時さ迷い、漂うように生きてきたつくるは、新しい年上の恋人・沙羅に促され、あの時何が起きたのか探り始めるのだった。
(小説のあらすじより)」

 村上春樹氏の小説は「海辺のカフカ」を面白く読んだことがあり、その他には「ノルウェイの森」だけでした。(ちなみに、「海辺のカフカ」は前半がGood。「ノルウェイの森」はそこそこでした)
 村上氏の小説はそれ以来で、今作はアタリでした。

 物語はまさに人生の中での闇部分を追っていくもの。といっても、すごく暗いダークな訳ではなく、人生の岐路に起こった謎を探っていくものでした。
 物語の展開は、スピーディーで派手とかではなく、読んでいると不思議に引き込まれて、読み進めたくなります。そして、再び読み始めればまたすぐに、物語の世界に入り込ませる不思議な作用がありました。

 誰にでも人生での過去の暗い部分、「なぜ? あの時に……」などというシーンがあると思います。そして、現在、様々な出来事に悩んでいたり。
 そうした中、この小説は読んでいる側に対しても、それらを考え、探っていく不思議な作用がありました。
 物語の主人公の過去の謎を追っていくと同時に、読んでいる自分の人生にもどこか響いてくる物語。

 不思議なのは、途中で一時中断が苦痛ではなく、本を閉じた後もいい感じで余韻に浸れると同時に、次の行動に対して切り替えられること。そして、再び、読み始めれば物語に自然に入っている、という独特な感じが楽しめたこと。
 普通は読むのを辞めたくなり、本を閉じた後は次の展開がすごく気になるものですが、それがいい感じで切り替えられる。もちろん、次の展開が気になるものなんだけど、それが苦痛とかではなく、現実に良い感じで作用しているというか。

 主人公の過去の境遇を、15年たってようやく追及していく展開も、いい感じで段階を踏み、かつての仲間との出会いとやり取り、そうした展開から謎を知っていく物語はいい感じの深みを味わえ、読んでいる側にもメッセージが伝わってきました。
 読んでいる側も主人公と同じ岐路の問題を探っていくようで、読みながら自分自身を見つめなおすようで、いい感じで考えさせられ、物語も楽しめる一冊でした。

8/10)

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