ドイツに影響する動向のヒントになった、『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告』(エマニュエル・トッド)

 ドイツだけではなく、ドイツに関わる周辺国、世界の国々の動向のヒントもありました。

冷戦終結と欧州統合が生み出した「ドイツ帝国」。EUとユーロは欧州諸国民を閉じ込め、ドイツが一人勝ちするシステムと化している。ウクライナ問題で戦争を仕掛けているのもロシアではなくドイツだ。かつての悪夢が再び甦るのか?

日本の読者へ
「私はごく自然に、理性的な節度の範囲内で自分の国を愛しているわけですが、一科学者として、政治家たちがその国に暮らす人びとの内でも最も弱くて危い立場にいる人びとを無益に苦しめつつ、全体を災厄へと引っ張っていくのを目の当たりにして激しく苛立つことがあるのです。」エマニュエル・トッド

(本より)」

 タイトルがちょっとすごかったので、手にとって読んでみた、という感じ(笑)。インタビュー形式でわかりやすかったです。

 世界でのドイツの位置づけは今、結構高い位置にあると感じます。そんなドイツの位置づけですが、独特な分析感は「なるほど」っていう点もあり、世界情勢を見るヒントになるものでした。
 タイトルからもある通り、ドイツの存在、ドイツによる影響が述べられていますが、それは周辺国や日本などドイツ以外について、その状況の分析もありました。

 EUの中でもドイツの影響力が強く、ドイツ抜きのEUはなかなか考えられなくなっています。
 そのドイツがそこまで強くなった背景と、今後のドイツの行動の動機など、分析されており、どれもちょっとした視点と感じ、今後のヨーロッパや世界の動向のヒントになると思います。

 興味深かった内容としては、

・ドイツのシステムは基本的に労働人口の九州によって成り立っている。
 →最初の段階では、ポーランド、チェコ、ハンガリーなどの(安い)労働人口だった。ドイツはコストの安い労働を用いて自らの産業システムを再編。そして、今度はソ連時代からの遺産である教育水準の高さが魅力的だったウクライナ。

・ロシアからヨーロッパへのガスパイプラインは、ウクライナを通っていることだけが共通点ではなく、ドイツに通じているということも共通点。
 →ガスパイプラインの到達点がドイツにコントロールされているということも。それは「サウス・ストリーム」が建設されることで、そのコントロールが外れてしまうということで、ドイツにとって不利益になる。

・アメリカ人の平等に対するものは、非常に相対的。経済的不平等の拡大、黒人差別などは問題になっている。ただし、アメリカは、現時点で非常に多様な出自の人々を糾合して一つの世界を作ろうとする試みにおいてリーダーの国でもある。

・ドイツは、経済的不平等の拡大はまだリーズナブルな程度であり、アングロサクソンの世界で見られる格差よりもはるかに程度が低い。
 →しかし、ドイツのシステムは、東ヨーロッパの低賃金や南ヨーロッパにおける給与の抑制を加味して考察すれば、現在中米に見られるのより、不平等なシステムが生まれつつあるという。平等性は残っているが、それは支配する側の国民の間、つまり、ドイツ人の間だけのこと。

・現在のロシアは、乳児死亡率が目覚ましく低下しつつあるという。それ以外の人口学的指標(男性の平均余命、自殺と殺人の発生率、出生率など)も有意の事態改善を示している。
 →2009年以来、ロシアの人口は増加に転じている。

・ロシアは地下資源の開発に依存する「不労所得経済」により、ますます農業により生きているということ。

・潜在的な富に満ちた1,700平方キロメートルの広大な国土と、大勢のハイレベルな科学者達を擁する1億4,400万の人口(2013年)、この2つがロシアの切り札。
 →国土とその資源を優秀・有能な軍隊で守りながら、世界経済がアジアと新しいテクノロジーへの移行を完遂するのを待つという(プーチンの)戦略。

・ウクライナはここ25年間、危機の中にいる。出生率の数値も低い。さらに、教育を受けた青年層が国外へ出て行ってしまうことが問題。
 →独立以来、人口の10分の1以上を失い、5,200万人の人口は4,500万人になってしまった。

・ドイツはグローバリゼーションに対して特殊なやり方で適応した。部品製造を部分的にユーロ圏の東ヨーロッパへ移転して非常に安い労働力を利用。国内では競争的なディスインフレ政策で、給与総額を抑制。
 →ドイツはこうして、中国に対してではなく、社会文化的要因ゆえに賃金抑制策など考えられないユーロ圏の他の国々に対して、競争上有利な立場を獲得した。ユーロのシステムにより、スペイン、フランス、イタリアその他のEU諸国は平価切り下げを構造的に妨げられ、ユーロ圏はドイツからの輸出だけが一方的に伸びる状態になった。こうしてユーロ創設以来、ドイツとそのパートナーの国々との間の貿易不均衡が顕著化してきた。

・日本の文化が他人を傷つけないようにする、遠慮するという行動様式に対し、ドイツ文化はむき出しの率直さを価値付けている。

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