今後の世界、日本を考えるためのヒント、『新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方』(池上 彰・佐藤 優)

 これからの世界の動き、日本の動きのヒントになる、考える内容となっていました。

領土・民族・資源紛争、金融危機、テロ、感染症……これから確実になってくるサバイバルの時代を生き抜くためのインテリジェンスを伝授する。
(本のカバー部分より)」

 分かりやすいということでも有名な池上彰氏と佐藤優氏との対談。これからの世界と日本の動向を分析する内容となっています。
 もちろん、今後の動向だけではなく、動向の背景や歴史なども述べられており、問題の背景から根本といったこともわかりやすく、語られています。
 そういった内容から、今後の動向を見ていく上でもヒントになり、自分たちの判断や考えるヒントになる内容となっていました。

 興味深かった内容は、

・核を封印しながら、適宜、戦争をするという文化が新たに生まれてきている。
 通常戦争は通常戦争として行なわれ、核はあまり戦争の抑止になっていない。

・第一次世界大戦と第二次世界大戦を連続して考えるといった説があり、今はそうした戦争の間の「戦間期」にいるだけなのかもしれない。

・漢族は人口が多いが、住んでいるところには天然資源がない。天然資源は人口の少ない少数民族が住んでいるところにある。
 中国の今後の安定と発展のカギは民族政策にある。漢族が自己主張を強め過ぎれば、中国の国家統合を壊す危険がある。

・ソビエト国家について、レーニンは、これは「国家」ではなく「半国家」であると。国家は階級抑圧の道具だから、本来は悪だ。ソビエトも、最終的には全世界に革命を起こして国家を廃棄する。しかし、今は帝国主義国家に囲まれているため、それに対向するための「半分国家であるようなもの」が必要と。

・「イスラム国」の中期的な目標は、「西はスペインから東はインドまで」。かつてのイスラム王朝が支配していた土地を取り戻したいう、というもの。

・国際情勢の変化を見る時は、金持ちの動きを見ること。
 昔から人口の5%の人間に富は偏在していた。大富豪などは自分達の儲けの半分を吐き出さないと潰されることを経験則でわかっている。そこで、自分達のつくったファンドで、慈善募金という名で富の再分配をしている。ただし、それは公平な再分配ではない。学生連中に奨学金をやれば、そのエリート達は、奨学金を出所のことを悪く思わないし、委託研究に金を出せば、基金の出所にプラスになる研究しかしない、という仕組みができあがる。
 大金持ちが、ダイレクトに社会に富を還元するパイプをつくっている。そこに政府は介入できていない。

・民主主義国は、極力戦争を回避して外交によって解決しようとする。
 しかし、戦争の勝者には、戦利品を獲る権利があるという、旧来型の戦争観を持っている国は、本気で戦争をやろうとする。すると、短期的には、戦争をやる覚悟を持っている国の方が、実力以上の分配を得ることになる。

・ナショナリズムの新たな形態として、遠隔地ナショナリズムというものがある。
 この形態がアメリカで問題になってきており、アメリカが世界各地のトラブルの発生地になる可能性がある。
 故郷の歴史について勉強したこともなかった故郷の問題を知り、自分達の「心の祖国を大事にしたい」という、ナショナリズム論でいう「遠隔地(遠距離)ナショナリズム」が働いている。
 このナショナリズムは、生真面目なものではあるが、根本的には無責任であるような政治活動を生み出す。遠くの地から政治に割り込む人々は、活動の舞台としている国に税を支払わなかったり、その国の司法制度から責任を問われることはない。
 安全な場所に身を置き、金や銃を送り、プロパガンダを流布させ、コンピュータを使って大陸間の情報ネットワークを築いたりする。
 インターネットの普及、グローバルマネーの流れ、交通網によって世界的な人の移動が容易になり、遠隔地ナショナリズムが大きな影響力を持つようになっている。
 「民俗のサラダボウル」と言われるアメリカが、それぞれの遠隔地ナショナリズムの発生地になりつつある。こうなると、世界各地の地域紛争がアメリカから生じることになる。

・東ヨーロッパの社会主義国が崩壊して、EUが東へ拡大。東は低賃金労働力が魅力的。
 低賃金労働者や移民が入ってきて、EU諸国は、今非常に社会が不安定になり、反移民、反EUの声が強くなっている。
 国民レベルでいうと困ったことだが、企業の論理では人件費の安い労働力が入ってくるのはメリット、というわけで、EUの中でグローバル化の歪みが生じている。

・これからのヨーロッパで危険なのはベルギー。南北の対立が激化しており、北部のフランドル地方に独立の動きがある。
 ベルギーはNATOの中心で、「EUの首都」であることから、問題が起こり国が壊れる事態は深刻。
 EUの首都になった背景として、「ベルギー語」というものがないことがあげられる。フラマン語(オランダ語の一種)とフランス語とドイツ語が公用語となって、一つの国を構成している。一つの国で、いくつもの言語があるのは、これこそEUの縮図のようなところといえる。

・北朝鮮の金正恩体制が恐れているのは中国。
 金正恩体制になり民生を向上させるため、配給を増やし、微々たるレベルだが食糧事情も向上。しかし、それは全て中国からもらっているもの。今後さらに中国依存が強まれば、中国が北朝鮮にミサイルと核の開発をやめるよう圧力をかけてくる。それを受け入れる代わりに、何かあった時は中国の核の傘の中に北朝鮮を入れることにする。
 そうなれば、朝鮮半島の地政学図は全く変わり、北朝鮮は完全に従属国になる。

・宗教と敵視が、これからの国際情勢を読む時のカギになる。

・融合しないアメリカ、分裂するアメリカという点で、「2050年問題」がある。
 「2050年問題」とは、建国以来、圧倒的に優位だった白人が、人口数として少数派に転ずるのではないか、という問題。
 ヒスパニック(アメリカに住むスペイン語を母語とする中南米出身者やその子孫、今は「ラティーノ」という)の人口が増加している。ラティーノは、大きな政府主義、民主党支持者が多いので、共和党が選挙に勝てなくなるという問題がある。
 一方で、実質的な権力を握っているのは、数としては少数派のウォールストリートであり、WASP(アングロサクソン系白人、プロテスタント)である、という構造は依然として変わらない。
 アメリカにおける統治の仕組みが大きく変化せざるをえなくなる。

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