今後の国際情勢を見るヒントに、『賢者の戦略 生き残るためのインテリジェンス』(手嶋龍一、佐藤 優)

 定期的にこういう形で刊行されることで、今の国際情勢を見るヒントになります。

不可解に思える出来事も、巨大なうねりの表層にすぎない。深層はインテリジェンスという叡智により立ち現れるのだ。日本が生き残るための戦略とは? 我々は反知性主義にどう抗うべきか? 「イスラム国」の台頭、中ロの新・帝国主義路線、マレーシア機撃墜、ウクライナ併合、ガザ地区砲撃、集団的自衛権論争など、最新情勢のつぶさな分析から鮮やかに「解」が導き出されていく。最強の外交的知性が贈る現代人必読の書。
(本のカバーより)」

 現在の国際情勢を見る上で、多くのヒントが語られていました。
 現在起こっている世界情勢の背景から、今後の展開になりそうなキーが多く語られており、考えさせられる内容となっています。

 興味深かった内容は、

・日本やロシアを含めて、21世紀の大国群はいずれも「外部領域」を持つ一種の帝国の形を取らなければ生き抜いていけない。民族を基本単位に構成する「ネイション・ステート」では、国益を維持できない時代になってきている。

・欧米と日本が戦略的思考を欠いたまま、ロシアを追い詰めれば、ロシアは中国とイランへ接近していく。そうなれば中国は、石油・天然ガスといったエネルギーを安定的に確保できるようになる。
 こうした新たなエネルギー調達システムを構築することができれば、新興の軍事大国である中国は、東アジアで本格的な膨張戦略を取りうることになる。
 そして、ロシアは天然ガスを中国などに売りさばくことで、EU諸国に強気で臨むことが出来る。
 つまり、ロシアと中国がさらに連携を強めれば、東アジアの戦略地図は塗り替えられてしまう。

・アメリカの3つの教会組織の形がある。その一つの会衆制度「コングリゲーショナル・チャーチ(会衆派教会、組合教会)」はプロテスタントの教派の一つ。それぞれの教会が自治的な運営を行なっている。全てを自分達で決定することができ、上位の組織というものはない。
 「イスラム国」はこの会衆派的な組織ネットワークにあてはまる。細かく分かれた小グループが自分達のことは自分達で決めていて、それらの集合体が全体の組織となっている。それに、そもそも細胞の集合体のため、ある意味では「内部分裂」は常の形態といえる。
 全体が小さい時には、互いがあまり関心を持つことなく、アラーの意に沿って自由にやっていく。ところが、組織が大きくなるにつれ、ヘゲモニー争いが起きることになる。

・武力介入を見送ることが、その後の国際情勢にいかなる影響をもたらすのか、それを突き詰めて考えることは重要だ。

・イランの核はサウジアラビアにとって、最大の脅威となる。もし、イランが核を保有することになれば、サウジも持とうとし、アラブ首長国連邦、カタールと、自衛のための核を持つという、核の拡散につながってしまう。

・「国際法」という従来のゲームのルールが通用しなくなり、従来の「国家」が成立しなくなり始めている。国際法上の国家の最低限の要件として、「自国の領土を実効支配していること」、「国際法を順守すること」の2点が挙げられるが、自国領土を実効支配することのできない「破綻国家」が出てきている。そして、IS(イスラム国)に代表されるような、ネットワーク型の組織が、国境を越えて領土を支配し、とりあえず国と名乗るような新しい統治体制が広がっている。

・21世紀は、国家というものも、戦争というものも、従来の枠組みでは捉えきれなくなりつつある。

・「情報戦」で重要なポイントは、誰かが事前に重要情報をリークする場合、「こんないいことがあるぞ」と期待を押し上げる内容であれば、それは成果を潰そうとする操作だとみていい。逆に「これもできない」と期待を下げるような内容であれば、交渉の成果を引き立たせる操作。

・国際情勢を読み解くことは、多次元の方程式を解く業。例え当事者の意図が分かったとしても、事態を正確に捉えられるわけではない。

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