真面目な内容の「ズルさ」、『「ズルさ」のすすめ~いまを生き抜く極意~』(佐藤 優)

 「ズルさ」という本のタイトルですが、書いてあることは結構真面目な内容でした。

自分を見つめ直す「知」の本当の使い方

◎「違和感」に気づく力
◎大切なのは「いかに負けるか」
◎必要な時間は最初に天引きしてしまう
◎すぐに理解しようとしない
◎上司の8割は「おかしな人」だと考える
◎生き残る人の上手な逃げ方

 本のタイトルを見て、「人生、上手く立ち回れ」という感じかと思いましたが、内容はもっと真面目で深いものでした。
 「ズルさ」というものの意味を悪賢いとかそういうイメージではなく、違った意味で人生を送るアドバイスやヒントを述べているものでした。
 ちょっとした人生相談のアドバイスでもありますが、そうしたヒントが盛り込まれている内容になっていました。

 興味深かった内容は、

・人生にとって大切なのは、「いかに負けるか」ということ。
→自分を見失わないように、上手く負けることができるかが重要だということ。

・文化や環境によって人の関心が異なり、そこから認識の強弱が生まれるということ。
→何を問題として捉えるかは認識の問題なため、文化の違いや生きてきた環境で、問題をどう認識するかということに差が出る。

・問題や危機に対して少しでも正面から向き合えるよう、日頃から備えておくことが大切。
→そのため、起こりうる問題を一度ノートに書き出してみること。そして、問題がどういうものなのかを見極め、今後どうなる可能性があるか、いくつかのストーリーでシミュレーションする。大切なのは自分が考えられる最悪のシナリオ、つまり悲観論で考えること。
 これが危機管理で、考えうる最悪の事態を想定し、それに対するイメージを膨らませて対応策を考える。危機管理の本質というのは、問題から目をそらさず、それを問題として認識すること。

・問題に向き合う際に大切なのは、問題自体を大きく三つに仕分けること。
1:解決可能か
2:解決不可能か
3:解決できなくても緩和することは可能か
→それによって対処の仕方が決まってくる。

・本来の経済活動では、農産物でも商品でも、何かしら労働によってモノやサービスが生み出され、それらが流通することによって社会が豊かになっていく。これがいわゆる実体経済と呼ばれるもの。一方で金融経済は、投資や投機という人間がつくり上げた仕組みの中で金融資産そのものを商品にして、その売買によって成り立っている。実体経済から離れ、将来株などが値上がりしそうだという期待のもとに売買されるということ。
→現状の株式取引は本来の投資というより、株券の売買益で利ザヤを稼ぐことが目的になっている。人間社会がつくり上げた一種の虚構である金融経済がお金の流れを決めてしまい、実体経済に大きな影響を与えている。
 実体経済から外れて金融経済が極端に膨らむのがバブルだが、それが弾けることで起きる混乱に、実体経済で働く一般の人たちも必ず巻き込まれる。
 今や金融経済を抜きに世界の経済は語ることはできないが、あくまで実体経済こそが本質的な問題であるということ。

・向き合うべき問題から目をそらさないためには何が必要かというと結論から言えば、仲間やコミュニティだということ。
→自分一人が直面しているのではなく、目を外に向ければ形こそ違え、みんな同様の問題を抱えている。だからこそ、分かち合える仲間、助け合えるコミュニティがあるかどうか。
 これからは自分の周りにどれだけ一緒に問題を共有できる仲間を持っているか。その強い信頼関係を大事にする方が、ずっと強い生き方になる。厳しい、不安な時代だからこそ、最後に生き残るのは自分の足元をしっかりつくりあげた人だということ。

・組織とは個人の価値観や正義感を超えた論理で動くもの。
→組織で働いている以上、その論理にある程度は巻かれる覚悟が必要。

・組織の中では、むやみに自分を主張するのではなく、一歩引いて自分を消すことも必要だということ。
→それが不用意な発言や失言を避け、うまくやっていく知恵でもある。

・一人でも約束が守れないような人物がいると、チーム全体のパフォーマンスが一気に落ちるということ。
→不信感や疑心暗鬼がチームに広がると、仕事全体がダメになる可能性がある。ウソをつかないか、信用できるかという人間性の根本的な部分を矯正するのは大変。そういう部分を見分けるのは毎日の生活習慣や態度。大きな仕事でどんな華々しい成果を上げるかということとは別に、毎日の小さなことに対して、いかにまじめに向き合っているか。ちょっとした約束事をきちんと守っているか。そういうところが重要。

・小さな頼み事や約束をおろそかにしているうちは、大きな仕事を振られることはまずないということ。
→約束というのは二重構造になっている。小さな約束事があって、それらを包み込むように大きな約束事がある。小さな約束を守っていくうちに信用を獲得して、さらに大きな約束事ができるようになる。

・意外に大切なのがお尻の時間を守ること
→相手の時間を奪うということに、もっと鈍感になるべき。約束時間に遅れること以外にも、必要以上に長居をして奪ってしまう時間もある。お尻の時間が延びる人は、相手から時間やお金を奪っているという自覚が希薄。

・信用すべき基準や規範を失った民衆は、まず自分の利益を守り、それを最大化することに集中してしまう。すると、約束をしっかり守るという意識が希薄になる。
→社会にこのような不信感が広がると、経済活動も社会活動も非常にやりにくくなる。こういう国には外国からの投資も企業進出も進まないので、経済的にますます遅れていく。

・社会が成長し資本主義がしっかり根づくには、お互いの信頼感、信頼関係が一番重要。
→(日本の)高度に発達した消費社会も、元を正せば信頼と信用という非常にプリミティブな人間関係の真理に裏打ちされている。約束を守るということは、社会と経済の基礎でもあること。

・恩に報いるというのは、相手の気持ちや心遣いといったなかなか形に表れないものをつかむことでもあるということ。それを感じとれる人が恩を感じ、恩に報いようと努力する。
→実際に社会で継続的に成功している人を見ると、例外なくこの感度が優れている。親や恩師、上司や先輩といった人たちに対する感謝の気持ち、恩に報いたいという気持ちで努力する。その純粋な気持ちが大きな推進力になる。

・人間が自分のためだけに頑張れることはたかが知れている。
→自分以外の家族や子供、知り合いや友人たち――。そういう人たちとの関係の中で、恩を与えたりそれに報いたりしながら生きる人たちの方が、頑張りがきいて結果として成功するし、その方が幸せな生き方だと言えるのでは。

・ビジネス以外での人間関係をできるだけたくさん持つこと。
→家族はもちろん友人、趣味のサークル、地域のコミュニティ・・・・・・。そこで経済合理性から外れた人間関係をつくる。そのつながりの中でお互いが持ちつ持たれつの関係であることを知る。お互いにもらったり与えたりして、支え合って生きていることが実感できる。それを体験から学んだ人は、人生でつらいことがあっても強く生きられるのでは。

・現在40歳前後の中堅社員から見ると、今の新人は総じておとなしく、従順で周囲に過剰に気を使っているように見えるかも。
→それには理由があって、彼らは厳しい就職戦線でボロボロになってから入社してくる。それだけの否定や拒絶を受けると、人間は精神的に参って自身を失ってしまう。最初にその洗礼を受けるわけで、入社した時に元気いっぱいだなんて新人がいたら、むしろおかしいくらいかもしれない。

・「わかりがおそいってことは恥じゃない」ということ。
→見た目だけでは見えてこない本質を見極めるには、時間をかけなければならない。理解が遅いのは決して悪いことではない。

・これからグローバルな競争社会が進めば、残念ながら組織の「軍隊化」はさらに進む。
→表向きは組織のフラット化、個性の尊重などと言われるかもしれないが、専門能力や技能を持っている人、数字という結果を出す人以外は、より厳しい環境の中で働かざるをえなくなる可能性が高い。
 その中でいかにうまく生き抜くか。それには、特殊技能や能力を身につけて代替不可能な人材になること。

・これまでにこれをするという時期までに、どんな知識とスキルを身につけるべきか、どんな資格をとるべきかを明確にして、計画的にそれを身につけていく。

・自分の10年後、20年後のイメージを明確にすることで、自然とその方向に思考と行動が向いていく。
→経理でも営業でも、その方法で自分なりの方法論を確立したら、社内レポートを作成したり、場合によってはブログで発言したりして、それをアウトプットし発信する。それによって、少しずつ周囲に認知されながら副業的な仕事をこなし、手ごたえを感じたところで独立、その分野のコンサルタントや講師になる。

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