パンチと恐怖を感じた『帰ってきたヒトラー(上・下)』(ティムール・ヴェルメシュ)

 主人公の行方が気になる展開で読み進められました。

 本書は、発売から1年2か月で、電子版などを含めてドイツ国内で130万部を売り上げた。現在(2013年11月)までに世界38カ国語での翻訳が決まり、さらには映画化まで決まっている。

【内容】……2011年8月にヒトラーが突然ベルリンで目覚める。彼は自殺したことを覚えていない。まわりの人間は彼のことをヒトラーそっくりの芸人だと思い込み、彼の発言すべてを強烈なブラックジョークだと解釈する。勘違いが勘違いを呼び、彼はテレビのコメディ番組に出演し、人気者になっていく……。

 ヒトラーの髪型と髭を模した印象的なデザインの表紙と、ナチスが権力を掌握した1933年にちなんだ19.33ユーロという価格で2012年9月に発売された本書は、翌月のフランクフルト国際ブックフェアで注目を集め、ドイツの週刊誌<シュピーゲル>のベストセラーリストのトップに躍り出て、その座を長期にわたって保った。
(「訳者あとがき」より)
(上より)」

 彼が帰ってきた――だが、アドルフ・ヒトラーが現代によみがえって、いったい何ができるのか? その答えを知るには、現代のベルリンで彼を目覚めさせてみればいい。空前絶後の風刺小説である本書は、まさにそこから始まる。
 最初の1ページからもう、痛快な場面の連続だ。なにしろ主人公は、テレビのコメディ番組のヒトラーではなく、本物のヒトラーだ。まわりを独自の視線で分析し、人々の弱点をナイフより鋭く稲妻より速く見抜き、そして奇怪な論理を堂々と押し進め、さらにゆずらない本物のアドルフ・ヒトラーなのだ。
 しかし、彼はいたって正気である。
(「本書について」より)
(下より)」

 「あのアドルフ・ヒトラーが現代によみがえったらどうなるのか?」 その発想が面白かったです。
 物語の後半から読み入るように、主人公・ヒトラーの行動が展開していく様子に夢中になっていきました。現代の社会状況にパンチをくらわしていく主人公の行動がどんな展開になっていくのか、どう影響していくのか、と引き込まれます。しかし、その引き込ませられる魔術の背景に、史実のあの悲劇さを思うと、その展開がどうなってしまうのか、という恐怖も感じました。

 そうした熱狂と恐怖を感じつつ、物語を読んでいくと、現代の社会の行方に対しても、どう展開していくのか、ちょっとした考えるヒントにもなるように思いましました。
 そういった意味で、この小説は歴史の背景を知っていると、さらに興味深く読めると思います。

7/10)

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)