職という追求から人生を考えさせられた『日の名残り』(カズオ・イシグロ)

 「人生とは」、「仕事・職とは」、何かというキーワードが隠されているような物語でした。

「品格ある執事の道を追求し続けてきたスティーブンスは、短い旅に出た。美しい田園風景の道すがら様々な思い出がよぎる。長年仕えたダーリントン卿への敬慕、執事の鑑だった亡父、女中頭への淡い想い、二つの大戦の間に邸内で催された重要な外交会議の数々――過ぎ去りし思い出は、輝きを増して胸のなかで生き続ける。失われつつある伝統的な英国を描いて世界中で大きな感動を呼んだ英国最高の文学賞、ブッカー賞受賞作。
(小説のあらすじより)」

 小説「私を忘れないで」で、カズオ・イシグロの小説を知りました。読んでいると不思議といつの間にか夢中になっている作品だったのが印象的な作品でしたが、今作では違った作風だったことに驚いています。作品としては、今作が前ですね。
 正直、作風がというよりも、物語を通じて、人生の中での仕事や職というものへの考え方や、過去と今後の歩み方について考えさせられ、読後もそれらを考えさせられる余韻を味合う作品でした。

 物語は、上記のあらすじにもある通り、主人公は執事を務めており、ちょっとした旅に出かけます。その旅の中、様々な過去の思い出を思い出しつつ、旅での出来事が繰り広げられます。

 主人公のスティーブンスの仕事は執事。物語のところどころで、スティーブンスがその執事というものを追求しています。執事というものを追求していく思いは、読者である私の仕事への考え方にも大きな影響を与え、そこから「仕事とは何か」といったことを考えるきっかけと道しるべを教えてもらった気がします。
 そうしたスティーブンスの執事という仕事への追求に対し、物語の行方やスティーブンスが導き出した答えは、つまり、「最後はどうなるのか」という答えは、実にシンプルでした。これが、また良かった。そのシンプルな答えが、読んでいる私にも響いてきました。
 そのシンプルさの中に、シンプルなんだけど、様々な要素が盛り込まれているように感じます。

 物語は旅の出来事とスティーブンスの過去の思い出が繰り広げられるのですが、そこには、よく女中頭との思い出が出てくるのですが、途中からこれが淡い想い出だろうというのは、読んでいると気づいてしまう(笑)。主人公のその鈍感さと仕事への思いが、また考えさせる点にもなっているように感じます。

 ただ、物語の流れは、ちょっと夢中になりやすいとはいえない流れもありました。どこか、夢中になるまで我慢して読む感もあったのが、正直なところ。
 それでも、読み込ませる何かがあるので、ちょっと物語を読んでいけば、小説の世界、執事の世界へと入り込んでいきます。

7/10)

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