性を通じて生とは何か? 悩みを抱えながらも人生を歩んで行くヒントを感じさせてくれた『ふがいない僕は空を見た』(窪美澄)

 読み始めるとビックリ!? 性の描写がナマナマしくて(笑)。でも、性を通して、生を考えるような作品で、面白かったです。

高校一年の斉藤くんは、年上の主婦と週に何度かセックスしている。やがて、彼女への気持ちが性欲だけではなくなってきたことに気づくのだが――。姑に不妊治療をせがまれる女性。ぼけた祖母と二人で暮らす高校生。助産院を営みながら、女手一つで息子を育てる母親。それぞれが抱える生きることの痛みと喜びを鮮やかに写し取った連作長編。R-18文学賞作品、山本周五郎W受賞作。
(小説のあらすじより)」

 冒頭でも書きましたが、読み始めるとちょっと後悔もしました。性の描写でビックリして、買う時に「思っていたものとかけ離れていて、間違ったかな~」っと。でも、読み進めていくと、知らないうちに物語に引き込まれていました。この小説、不思議と知らないうちに引き込ませる魔力があるみたいです(笑)。
 物語(小説)の構成は「ミクマリ」、「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」、「2035年のオーガズム」、「セイタカアワダチソウの空」、「花粉・受粉」の5つの物語がそれぞれつながっています。それぞれの物語にはそれぞれの主人公がいて、物語になっています。そのそれぞれの物語がつながり、一つの大きな物語にもなっています。そして、それぞれの物語を読んでいると、「性とは何か」という「性」がキーワードになっていました。これがまた、エロイとかではなく、考えさせられる展開で、物語にうまく「性」を取り入れ、「生」を考えさせてくれ、そして、人生について考えさせてくれる作品となっています。
 そこに、主人公の生活が絡み合います。主人公がある目的をクリアするために、という物語ではなく、日常の生活を送りながら、悩みながら、「性」というものを感じて生活を送り、人生を歩んで行く姿が描写されています。そして、問題は完全解決ではなく、悩みを抱えながらも生きていくことへのヒントが隠されているように感じました。
 終始感じたのは、不思議と知らないうちに物語に引き込まれている感覚と、「性」や「生」について、不思議と知らないうちに考えさせられている感覚を覚えることでした。それが、めちゃめちゃ夢中になるというのではなく、かといって、面白くないとかでもなく(面白いと思います)、なんかちょうどいい感じになっています。考えさせられるのもめちゃめちゃ疲れるまでとかではなく、何気にという感じで考えさせられるのです。
 物語を通じて、いい感じで考えさせられる問題提起。知らないうちに物語に引き込ませてくれる、この不思議な感覚が魅力な作品でした。

7/10)

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